2026年6月定例会で、松森潤平議員は「庄原市のブランディングの方向性」について質問しました。5つのリーディングプロジェクト「ピースフル」の第1の柱として掲げられたブランディング推進について、「庄原市=〇〇」というブランドの核の定義、インナーブランディング(市民・職員自身が庄原の価値を再認識する仕組み)、全庁横断的な連携体制の整備を訴えました。市は令和8年7〜8月の市政懇談会でブランディングをテーマに市長自ら説明するとともに、「シティプロモーション構想」を令和8年度中に策定することを示しました。「庄原市=里山」とするかどうかは現時点で未定です。
テーマ:インナーブランディング強化 / シビックプライド醸成 / AIアバター活用提案
令和8年度より庄原市は「庄原ブランディングの推進」を5つのリーディングプロジェクト「ピースフル」の第1の柱として掲げた。これまでも広報しょうばらや公式SNS(LINE・Facebook等)を通じた情報発信を継続してきており、令和7年8月の鮎友釣り写真が広島県広報コンクールで最優秀賞を受賞するなど、職員による広報活動の成果も見られる。組織面では経営戦略課内に「シティプロモーション係」を新設し、推進体制を整備している。市内の各部署を横断するプロジェクトチームを編成し、ブランディングの具体的手法を検討中である。令和8年7月・8月には全地域で市政懇談会を開催し、庄原ブランディングの推進をテーマに市長自らが市民に説明する機会を設ける予定。外部専門家の活用については、総務省「地域力創造アドバイザー」制度による広報戦略専門家の招聘を検討中。また、今年度中に「シティプロモーション構想」の策定を予定している。スポーツ大使(金藤理恵氏)・ふるさと大使(西田和昭氏)・芸備線・庄原市応援大使(徳永ゆうき氏)等の著名人も任命済みである。
松森議員は第2期庄原市観光振興計画アンケート調査および第3期長期総合計画アンケート調査のデータを示した。これらの調査では、庄原市の観光地としての認知度が低く、市民の愛着度が10年前と比較して低下しているという実態が明らかになっている。
また第3期長期総合計画策定時の市民アンケートでは、「庄原市内でどこに愛着・誇りを感じるか、市外の人に自慢したいものは何か」という問いに対して、市民・高校生・中学生の全セクションで「自然」が第1位であった。しかし、豊かな自然を強みに持つ自治体は全国に多く、差別化を図ることが難しいと松森議員は指摘した。また10年後の庄原の姿として市民が「子ども」をキーワードに挙げていることも提示された。
「里山」キーワードの広域的な定着について、松森議員は庄原市内の多様な分野での使用実例を独自調査として提示した。観光・イベント(里山マルシェ、庄原里山オープンガーデン)、食品ブランド(ブランド米「里山の夢」)、施設(里山の駅 庄原ふらり)、歴史教育(里山古代クラブ、庄原市里山体験交流協議会)、移住定住(里山暮らし)、そして議会会派名(里山未来クラブ)にまで及ぶ。
全国先行事例として新潟県十日町市津南町(里山×現代アート、年間数十万人の来訪者)、徳島県神山町(里山×IT、若い企業家によるサテライトオフィス誘致)を提示し、「里山」を軸とした差別化ブランディングの可能性を示した。AIアバター活用では安芸郡府中町(多言語行政窓口対応)、広島ドラゴンフライズ(ファン交流)、埼玉県長瀞町(キャラクター「とろにゃん」)、三重県明和町(「めい姫」)の事例を提示した。
松森議員が市に求めた主な内容は次の通りである。①インナーブランディングの強化:外向きの発信より先に、まず市民・職員が庄原の価値を再認識することを最優先とすること。②「庄原市=〇〇」というブランドの核の定義:差別化を図るには「自然が豊か」という一般的な強みではなく、庄原ならではの尖った核を定める必要がある。③全庁横断的な連携体制の整備:ブランディングは農業・観光・教育・暮らし・歴史文化など多岐にわたる分野が関わるため、庁内連携が必要不可欠である。④若者・子育て世代への意見聴取:10年後・20年後を担う世代の意見を収集する機会を確保すること(議会「市民と語る会」での学校訪問との連携も示唆)。⑤大使・アンバサダーの積極活用:せっかく任命された著名人大使とのコラボレーションを推進すること。⑥AIアバターの実証実験研究:ヒバゴンや大使をキャラクターとしたAIアバターで窓口対応やシティプロモーションへの活用を研究すること。
最も繰り返しのあった場面は、「庄原市=〇〇」というブランドの核を問う質問の2度目の往復であった。松森議員が「真の強みを生かしたブランディングの軸について、もう一度お考えはないか」と再質問したのに対し、経営戦略課長は「プロジェクトの肝であるとは思っているので、どういったものを発信すれば1番有効なのかはしっかり考えていきたい」と繰り返し、1回目の答弁から実質的な進展はなかった。
また、シティプロモーションの具体的な現在の取り組みを問うた際、経営戦略課長は「具体的なものをお返しするのはなかなか難しい」と述べ、広報紙でのインナーブランディング的取り組みと「シティプロモーション係の設置」という一般的な回答にとどまった。これに対し松森議員は「公式LINEやFacebookもあるはず」と補足しながらも、ターゲットに合わせた各媒体活用の必要性を指摘する形で議論をつないだ。大使活用については、課長みずから「十分にできていなかった部分もあろうかと思います」と不足を認めた。
【回答】
インナーブランディングの重要性:認識・強化意向あり(市長が明言)。「庄原市=〇〇」のブランドの核:現時点で未定(「今まさに知恵を絞っている段階」)。「里山」キーワード採用:明言なし(「非常に馴染みが深い」「参考にする」との応答)。大使活用:「十分できていなかった」と認め今後検討。AIアバター活用:「まだまだ研究段階」。
【今後の対応】
①令和8年7〜8月:市政懇談会(全地域)でブランディングをテーマに市長自らが説明。②令和8年度中:「シティプロモーション構想」策定(現状課題整理・方向性・アクションプラン)。③総務省「地域力創造アドバイザー」の専門家活用を検討。④プロジェクトチームで大使活用策・AI活用策を継続検討。
【最終的な市のスタンス】
ブランディング・インナーブランディングの重要性については市長・担当課・部長のいずれも一貫して認識しているが、「庄原市=〇〇」という最も重要なブランドの核の設定は本議会時点でも定まっていない。具体的手法・プラットフォーム形態・大使活用・AI活用はいずれも「検討中」「研究段階」の域を出ておらず、令和8年度中に策定予定のシティプロモーション構想が最初の具体的な成果物となる見通しである。