2026年6月定例会で、谷口隆明議員(日本共産党)は「第10期介護保険事業計画及び帝釈雄橋の復旧」について質問しました。第9期末の介護給付費準備基金残高が6億1700万円に積み上がる中、谷口議員は「第10期での保険料引き下げ」を強く求めましたが、市は「適切な水準を検討する」という表現にとどまりました。帝釈雄橋については昨年11月の落石事故以降の通行止めが続き、復旧は令和10年度中が目標。20年間未実施だった高台からの眺望ルート整備や連絡組織設置の提案に対し、市は文化財規制を理由に「精査が必要」と慎重な姿勢でした。
テーマ①:第10期介護保険事業計画・準備基金・保険料の見直し
テーマ②:帝釈雄橋通行止め解除の見通し・周遊ルート整備の提案
本市は第10期介護保険事業計画(令和9〜11年度)の策定作業を進めている。第9期末(令和8年度末)の介護給付費準備基金残高見込みは6億1700万円と大幅に積み上がっている。これは①第7期以降の国による積立制度の強化、②コロナ禍でのサービス利用抑制による給付費減少、③国の財政調整交付金の増加が主な要因である。第9期当初は基金4億円の取り崩しを計画していたが不要となった経緯がある。国の介護保険法改正では、中山間地域における特定地域サービスの新設が予定される一方、要介護1・2のサービスを保険給付から総合事業に移行させる議論が継続している。帝釈雄橋(国指定特別天然記念物)については、令和7年11月3日の落石事故により現在も通行止めが続いている。帝釈峡観光への影響は深刻で、令和7年4〜5月の神龍湖駐車場利用台数は741台(前年851台、13%減)、観光バスは0台(前年8台)であった。2007年3月に文化庁補助事業として作成された「天然記念物雄橋緊急調査報告書」には高台からの眺望施設整備・連絡組織結成など8つの提言が盛り込まれているが、約20年が経過した現在も連絡組織は設置されていない。
谷口議員は6億円超の基金が積み上がった背景として、コロナ禍の特異な状況が収束した後も保険料水準が据え置かれてきた点を問題視した。また国の介護保険改正に関し、人員基準の緩和がサービスの質低下を招くリスクと、中山間地・過疎地域では事業者が撤退しやすい構造的問題を指摘した。帝釈雄橋については、観光客・観光バスの激減データを具体的に示し、単なる文化財保護の議論にとどまらず、通行止め期間中に活用できる代替観光ルートの整備を求めた。2007年の報告書が示した「高台からの眺望スポット整備」は、雄橋が渡れなくても来訪者に価値を提供できる具体的な施策として提言した。また、連絡組織が20年間一度も設置されていない点を「提言が宙に浮いたまま」と強く指摘した。
谷口議員が市に求めた内容は次の通りである。①介護給付費準備基金6億1700万円を第10期保険料の明確な引き下げに活用すること。②国の介護保険法改正で要介護1・2のサービス外しや人員基準緩和が導入された場合に、中山間地・過疎地域の事業者・利用者に甚大な影響が生じることを国に強く要望すること。③帝釈雄橋の通行止め解除に向けた明確なスケジュールを示すこと。④通行止め期間中の代替観光施策として、2007年報告書の提言(高台眺望施設・連絡組織結成等)を活用した新たな周遊ルートの整備を進めること。
帝釈雄橋の眺望施設整備をめぐって、谷口議員と牧原教育長の議論が噛み合わない場面があった。議員が「2007年の報告書の提言を今こそ実施すべき」と求めたのに対し、教育長は「特別天然記念物の現状変更には文化庁許可が必要で精査が必要」と答弁。議員が「精査が必要といつも言っているが20年経っても何もない。何を精査するのか」と繰り返すと、教育長は「ドローンやカメラを使った映像提供という代替案もある」と提示。議員は「ドローンを飛ばすのとルート整備は別の話だ」と反論し、文化財保護の制約と観光振興のジレンマが浮き彫りになった。
【回答】
保険料:「準備基金の活用を視野に入れた適切な保険料の設定を検討」(引き下げは明言せず)。帝釈雄橋解除時期:「最短で令和10年度中」(最短でも2年以上先)。眺望ルート整備:「十分な精査が必要」「ドローン・カメラでの映像提供を検討」(具体的施設整備には言及せず)。介護保険改正:「中山間地のコストが適切に評価されるよう国に要望する」。
【今後の対応】
①令和8年7月10日:沖村雄二博士(広島大学名誉教授)による帝釈雄橋講演会の開催。②帝釈雄橋の工法検討・文化庁許可申請を令和8〜9年度に進め、令和9年度中の工事完了・令和10年度中の解除を目標とする。③第10期介護保険事業計画の策定作業の中で保険料水準を決定(令和9年4月施行)。④国の介護保険法改正の動向を引き続き注視し、中山間地への配慮を国・県へ要望。
【最終的な市のスタンス】
介護保険については市民負担軽減への意向は示しているが、具体的な引き下げ額は示さなかった。帝釈雄橋については「文化財の手続きをきちんと踏むことが大事」という姿勢を終始維持し、観光影響への懸念は認識しながらも眺望施設など代替観光施策の具体化には踏み込まなかった。