2026年6月定例会で、松本みのり議員は「ペットの多頭飼育崩壊を未然に防ぐ取り組み」について質問しました。多頭飼育崩壊は当事者の孤立・貧困・精神疾患が背景にあることが多く、動物と飼い主の双方への支援が必要な複合的な問題です。松本議員は早期把握のための自主申告制度の創設・相談窓口の整備・不妊去勢手術の助成強化を求めました。市は「広島県との連携強化」を基本姿勢としつつ、福祉部門と連携した飼い主支援の重要性を認識していると答弁しました。権限の制約がある中で庄原市が独自にできる介入の範囲拡大と予防的支援体制の整備が今後の焦点です。
テーマ:届け出制度の導入提案 / 関係機関の横断連携 / ボランティア支援の仕組みづくり
動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)では、飼い主に対して動物を終生にわたり適切に飼養し、無計画な繁殖を防ぐための措置を講じる責務を定めている。広島県が動物愛護管理に関する専門的指導権限・動物愛護管理施設を有しており、庄原市はあくまでも県と連携する立場にある一般市である。市は動物関連の相談を電話で受け付けており(環境政策課)、民生委員や地域の方からの情報提供も活用して状況把握に努めている。過去5年前に深刻な大掛かりな対応事例があり、市の介護関係職員を通じた飼い主からの相談がきっかけとなり、環境政策課・動物愛護センター・動物病院・警察が連携して約20頭の所有権放棄・県センター留置という対応を実施した。令和3年9月には比婆獣医師会と「動物愛護連絡協議会」を設立し、野良猫の不妊去勢手術補助金(メス1万円・オス5000円)の助成も実施している。市ホームページには「引き取りはできません。広島県動物愛護センターへ相談してください」との案内を掲載している。
松本みのり議員は生物学的な繁殖力のデータとして、猫は生後6〜7ヶ月で最初の発情期を迎え、妊娠期間は約2ヶ月、年間1匹の母猫が20匹以上産むことがあり、翌年には80匹以上に増える可能性があることを示した。滋賀県の「多頭飼育崩壊対策マニュアル」に収録された調査データでは、ケアマネージャーの24%が多頭飼育問題を抱える利用者を担当した経験があり、問題の87%で猫が飼育されており、そのうち57%が屋外または外から出入り自由な飼育方式だったと報告されている。
市内の実態として、2つの動物愛護ボランティア団体と広島県の動物愛護推進員が活動中。ある団体は年間100件以上の捨て猫・多頭飼育等の相談に無報酬で対応しており、別の団体は令和7年(2025年)に97匹の猫を保護し65匹を譲渡した実績を持つ。個人で21匹の保護猫を飼育している事例も確認されている。メス猫1匹の避妊手術費は3〜4万円(血液検査・ワクチン・白血病検査含む)に加え搬送費もかかり、これら費用はすべてボランティアの自己負担・寄付で賄われている。
松本議員が求めたことは次の通りである。①届け出制度の導入:多頭飼育の届け出制度を設け、早期の状況把握と介入の糸口をつくること。②ホームページ案内の改善:「困ったら市に相談してください」という入口の一言を加えること。③関係部署の横断連携体制:環境政策課・福祉部局・社会福祉協議会・民生委員・動物愛護関係者が定期的に情報共有できる場と仕組みをつくること。④ボランティアへの支援:持ち出しで地域福祉を支えているボランティアに対して支援の仕組みを構築すること。⑤「崩壊してから対応」から「崩壊させない仕組み」への転換:早期把握・早期介入が鍵であり、多頭飼育の実態把握を進めること。
最も押し問答になったのはホームページの案内改善を求めた質問の往復だった。松本議員が「神戸市のように『絶対に市に相談してください』という一言を加えてほしい」と具体的に求めたのに対し、環境政策課長は「神戸市は政令指定都市で権限が違う」「市独自で対応できない部分もある」と2度繰り返した上で、「ホームページの案内の仕方等については工夫をする余地はあろうかと思いますけれども」と述べるにとどまり、「いつまでに何を変える」という明確な答弁はなかった。松本議員が「それでも困ったら相談してくださいとの案内にはならないでしょうか」と2度問い直しても、同様の回答が繰り返された。
また、「今は気づいた人・部署がそこで何とかしなければならない状況。みんなで解決できる仕組みを作ってほしい」という発言に対し、課長の最終答弁では「ボランティアの知恵もお借りしながら連携する」という趣旨の言及があったが、具体的な体制整備の時期や方法については示されなかった。
【回答】
届け出制度の設置:市独自での実施は困難(「多くの課題がある」)。ホームページ案内の改善:「工夫の余地はある」と述べるも具体的な改定を明言せず。関係部署横断の定期連携体制:「定期的な連絡会議はない」・現状は随時対応のみ。ボランティア支援:ふるさと応援寄附金活用の市民団体支援制度を提示(新たな支援策の創設はなし)。
【今後の対応】
①県との年1回の会議にて庄原市の状況・届け出制度の可能性について情報交換を行う。②ホームページの案内方法を工夫する(時期・内容は未定)。③ボランティア団体はふるさと応援寄附金活用を促す。④市・関係機関がボランティアとともに連携して取り組む意向を表明。
【最終的な市のスタンス】
多頭飼育崩壊の深刻さと「人も動物もボランティアも孤立させない」という視点の重要性は認識しているが、一般市として法的権限・専門体制・施設の制限がある中、「できる範囲で丁寧に対応する」という立場を維持した。定期的な横断連携体制の整備・届け出制度の推進・ホームページ改善の具体的なコミットメントは、本議会時点では示されていない。